AEDは妊婦さんに使用しても大丈夫?気をつけたいポイントは?
AEDは突然心停止が起きた人に対して、電気振動を与えることによって、心臓の活動を正常に戻すために使用される機器です。医療従事者だけでなく、一般人も利用できる機器として、ショッピングモールやスポーツジムなどあらゆる場所に設置されています。今回の記事では、お腹に胎児を宿す妊婦にAEDを使用してよいのか詳しく解説します。
妊婦さんにもAEDは使用しても大丈夫
「もし心停止で人が倒れて、その人が妊婦だった場合、AEDは使用してもいいのですか」「妊婦にAEDを使用した場合、お腹にいる胎児に悪影響を及ぼす可能性はありますか」という疑問を持つ人は多いのではないでしょうか。結論、妊婦であってもその人が心停止状態である場合、AEDを使うことが一番の救命措置の方法になります。
もし妊婦の心停止が続いた場合、胎児への酸素供給は滞ってしまいます。そうした場合、母親の命も救えないのと同時に、そのお腹にいる胎児も命を落とす結果となってしまうでしょう。つまり、母親をAEDで早急に蘇生することが、母子両方の命を救うといえます。またAEDには、電気ショックが必要な場合のみ、電気をあたえるという機能が備わっています。妊婦にたまにみられる、太い静脈が胎児の存在する子宮によって圧迫されて気を失ってしまったという事例では、AEDで電気ショックを与えようとしても、作動しないように設計されています。
「では今までに、妊婦にAEDを使って胎児に何かしらの影響が出たことはないの」と疑問に思っている人もいるのではないでしょうか。ここからはその疑問にお答えします。結論、妊婦にAEDを使用し、胎児に何かしらの影響を及ぼしたという事例は、今のところ報告されていません。たしかに母に与えた電気によって胎児が感電したり、心臓で心室細動を起こしたりする可能性はゼロとはいえないでしょう。しかし今のところの見解では、胎児の命を心配して妊婦に対してAEDを使用しないという選択肢はなく、母子双方の命を救うためにも、妊婦が心停止で気絶した場合は、AEDを使用するべきだと判断されています。
妊婦さんに配慮したAEDの使用方法
この章では、いざ妊婦が心停止で倒れ、AEDを使用しないといけない場面に遭遇した場合、どのような配慮をもってAEDを使うことが必要か解説します。基本的には、妊婦以外の人に実施するAEDの使用方法とやることに違いはありません。ただ心停止から蘇生をはかるために必要な心肺蘇生のやり方に注意点があるので解説します。心肺蘇生するとき、妊娠20週目以降の妊婦の場合には、下大静脈と大動脈への圧迫を極力避ける必要があります。体の右側の下に何かクッションとなるものを設置して、体の左側が下になるように寝かしましょう。また手を当てる位置を、通常の大人に心肺蘇生を実施する場合よりも、頭側に置くようにしてください。
女性にAEDを使用する際に知っておきたいポイント
最後の章では妊婦だけでなく、女性に対してAEDを使用する際に、知っておくべきポイントを解説します。実際男性の中には「心停止で緊急を要する場合であったとしても、AEDを使用するために女性の服を脱がせることに抵抗を感じる」「もしAEDを使用するために女性に触れた場合、後々罪にとわれないか」という不安を抱いている人はいるのではないでしょうか。
実際、令和元年に京都大学が小中高生を対象に実施した研究結果で、とくに高校生以上の年代において男女間におけるAEDの使用率に差があったと報告されています。女性に触れたり、服を脱がせたりすることへの戸惑いが、この差を生んだと考えられています。では実際女性が心停止を起こし、AEDを使用しなければいけない際に配慮すべきポイントを大きく2つ紹介します。
1つ目のポイントは、人目を避ける、もしくは周りに呼びかけその周辺を囲んでもらうことです。傷病者のプライバシーを守るために、救助に関わる人以外は、その場から離れてもらうようにしましょう。中には、AEDを使用して心肺蘇生を試みている状況を動画に撮り、SNSに投稿しようとするような悪質な人がいることも考えられなくはありません。周りの人に囲んでもらい人垣をつくるなどして対策しておきましょう。
2つ目のポイントは、服をすべて脱がさなくても大丈夫だが、ブラジャーのワイヤー部分やアクセサリー類など金属製品をパッドに触れさせないようにするということです。このような金属を着用したまま電気を流すと、電力が低下したり、着用部分をやけどさせてしまったりしてしまう可能性があるため注意しておきましょう
まとめ
今回の記事では、胎児をお腹に宿す妊婦に対してAEDを使用することは可能なのか紹介しました。本文でも何度も述べてきましたが、まずは母親の命を守るために、迷わずAEDの使用を検討しましょう。AEDは電気ショックが必要ない場合には、作動しない設計となっているため、自分で判断せず使用を試みてください。AEDの使用が必要な場面は、突如めぐってきます。この記事を読んでいておいて、いざその現場に立たされたときに、焦らず冷静に対応できるよう備えておきましょう。