女性へのAED使用をためらわないで!女性へ使用する際の注意点
救命のためといっても「女性の衣服を脱がせること」に抵抗感のある男性、「異性から衣服を脱がされること」に抵抗感のある女性は多いのが現状です。しかし、倒れたのが女性であっても、AEDの使用をためらってはいけません。この記事では、AEDを女性に使用する際の注意点について紹介します。有事の際に慌てなくて済むよう、注意点を把握しましょう。
もくじ
AED装着に対する男女の意識の差
「倒れたのが女性だったため、AEDが使われなかった」という事例が過去にあります。これはあるスポーツ大会でのトラブルですが、女性が倒れた際に駆け付けたのが男性だったためでした。結果として命は助かりましたが、処置が遅れたため女性には重い意識障害が残り、現在でも寝たきりの生活が続いているとのことです。
高校生になると男女差が顕著に
京都大学などの研究グループが「学校内で倒れた子ども232人に対し、AEDが使われたかどうか?」という調査をした結果、驚くべき事実が浮上しました。小中学生では大きな男女差はなかったのですが、高校生では男子生徒なら83.2%、女子生徒が倒れた際はわずか55.6%しかAEDが使用されていなかったのです。
セクハラとして、訴えられる?
AEDは、パッドを右胸の上と左脇腹の2ヶ所に装着し、使用します。そのため男性が女性の体に触れてしまうこと、衣服を脱がせることに抵抗感のある人が多いようです。また、なかには「助けたって、後でセクハラとして訴えられるのでは?」という恐怖心から、AEDを女性に使用しない男性もいます。
しかし、日本AED財団で顧問を務める武蔵野大学法学部の特任教授によると「異性の体に触れたとしても、それが命を救うための行ためなら罪にならないし、民事責任も問われない」とのことです。
救命率は1分毎に約10%ずつ減少
実は「心停止が起きた後に何の救命措置もしないと、救命率が1分毎に約10%ずつ減少していく」というデータがあります。そのためAEDの使用は、文字通り一刻を争うのです。前述の教授も、人が倒れて意識や呼吸が不自然な場合は、速やかな119番への通報と胸骨圧迫、AEDの使用を勧めています。倒れた人が女性だったからという理由でAEDが使用されないのは、決してあってはいけないことなのです。
金属製のアクセサリーを外す
まず、倒れた女性がネックレスなど金属製のアクセサリーを身につけていたら、必ず外してください。外さないと、次のような事故につながりかねません。
効果が低下するだけでなく火傷の恐れも
AEDは、電気ショックを起こして心臓のリズムを正常化させる器具です。パッドを貼る右胸の近くにアクセサリーがあると、電気ショックの効果が低下してしまいます。また、通電することで金属がスパークを起こし、火傷してしまう恐れもあるのです。女性にAEDを使用する際は、アクセサリーの有無を確認しましょう。外すのが困難な場合はできるだけパッドから遠ざけるか、AEDに付属したレスキューセットの鋏で切断してください。
ブラジャーは必ずしも外す必要はない
かつて、ブラジャーは金属製のホックが付いていることも多いことから「アクセサリーと同じように外すべき」という考えが主流でした。しかし、金属製のホックは背中側に付いていることが多いためリスクが少ないようです。また、ブラジャーを外すのに手間取っているうちに時間を消費してしまうため「ブラジャーは必ずしも外す必要はない」という考え方にシフトしつつあります。ただしパッドを当てる際は、ブラジャーを挟まず、素肌に直接当てるようにしましょう。
女性でもAEDを使用することをためらわない
ヘルステック分野のリーディングカンパニーとして有名な「フィリップス」がメールマガジン読者を対象に行ったアンケートに、「自分が屋外で倒れ、AEDを使用してもらう際に異性から衣服を脱がされることに、不快感・抵抗を感じるかどうか?」という質問があります。
この質問への男性の回答「不快感・抵抗共に感じない」77%に対し、「不快ではないが抵抗を感じる」と回答した女性は70%にのぼりました。しかし、電気ショックが1分遅れるごとに救命率は約10%ずつ下がってしまい、119番してから救急隊が到着するまでにかかる時間は、全体の約3割が10分以上だというデータが出ています。そのため、倒れたのが女性であっても、救命率を上げるために迷わずAEDを使用してください。
妊娠中の女性でもAEDを使う
「お腹の赤ちゃんによくないのでは?」という不安感から、妊娠中の女性にAEDを使用することを躊躇ってしまう人もいるようです。しかし、母体が助からなければ赤ちゃんも死んでしまうので、妊娠中の女性であっても心停止の可能性がある場合、AEDを使用して問題ありません。
ここまで、AEDを女性に使用する際の注意点を紹介してきました。すぐに救助すれば命が助かる見込みがあるのに、性的な壁が原因で「倒れたのがたまたま女性で、駆け付けたのが男性だった」ということからAEDを使用されないケースが多いのは、とても悲しいことですよね。心停止から救助が遅れるほど救命率も下がるので、女性が相手でも迷わずAEDを使用することが大切です。