救命率を左右する!バイスタンダーって何?
ある日突然家族が苦しみ始めたり、道を歩いていると急に人が倒れたり、職場で従業員が倒れたりするなど、日常生活の中で誰もがバイスタンダーになる可能性があります。バイスタンダーになったとき、私たちは一体どう対応すればよいのでしょうか。本記事では、バイスタンダーの行動の重要性と対応の方法について解説します。
バイスタンダーとは
バイスタンダーとは、けが人や急病人が発生した場合、その場に居合わせた人のことです。このような状況で、バイスタンダーが適切な対応をすることは、患者の予後や生存率に大きな影響を与えます。
バイスタンダーの役割はおもにふたつです。ひとつ目は心停止の早期認識と119番通報、ふたつ目は一次救命処置。これらの役割を適切に果たすことで、救命率が大幅に向上するだけではなく、患者の苦痛の軽減や病状の悪化の防止も期待できます。
心停止の早期認識と119番通報
心停止の早期認識は、バイスタンダーのもっとも重要な役割のひとつです。心停止の症状には、突然の意識喪失、呼吸の停止や異常な呼吸などが含まれます。これらの兆候を見逃さず、速やかに判断して119番通報を行うことが大切です。
また、早期に通報することで、救急隊が迅速に現場に到着し、専門的な医療処置を開始することが可能になります。
一次救命処置
一次救命処置(BLS: Basic Life Support)には、心肺蘇生(CPR)やAEDの使用が含まれます。CPRは、胸骨圧迫と人工呼吸を組み合わせたもので、心臓や肺の機能を人工的に維持するための処置です。
AED(自動体外式除細動器)は、心室細動などの不整脈を電気ショックによって正常なリズムに戻す装置です。AEDが近くにない場合は、ほかの人にAEDを探してもってきてもらうとよいでしょう。AEDの到着を待つ間は手動で心配蘇生を行い、必要な救護活動を行います。
バイスタンダーの対応が救命率を左右する!
バイスタンダーが適切な救命処置を行っているかどうかで、傷病者の生存率は大きく左右されます。生存率だけではなく、予後の回復スピードを上昇させるには、バイスタンダーの行動が重要になるため、日頃から心臓マッサージの方法やAEDの使い方などを確認しておきましょう。とくに、心停止が発生した傷病者へのCPRとAEDの使用が早ければ早いほど、傷病者が正常な状態に戻る可能性が高くなるのです。
反対に、適切な処置が行われなかった場合、すぐに命にかかわらない状況であっても、病状が悪化することで、致命的な結果になることがあります。救急蘇生法の指針によれば、バイスタンダーによる心肺蘇生が行われた場合の1か月後の社会復帰率は10〜30%、行わなかった場合はわずか数%以下と発表されています。
また、救急隊員がAEDによる電気ショックを行った場合の1か月後の社会復帰率は30%~50%です。しかし、救急隊が到着する前にバイスタンダーがAEDを使用した場合の社会復帰率は50%以上と非常に高い結果が出ています。つまり、救命のプロに任せるより素人がいかに早く救命処置を施すかが分かれ道となるというわけです。
バイスタンダーがやるべき対応
バイスタンダーは心停止の早期認識と119番通報、そして一次救命処置を行う必要があります。しかし、実際に救命活動が必要な現場に遭遇したら、これらの対応をどう進めればよいのでしょうか?こちらでは対応の流れを解説します。
心停止の早期認識と119番通報
まず、周囲の状況を確認することが重要です。交通状況や落下物、火災、感電など、自分自身の安全を確保できない場合は、傷病者にむやみに近づいてはいけません。安全を確認した後、傷病者の肩をやさしく叩きながら、大きな声で呼びかけましょう。
本人の意思による動作や応答があれば反応ありと判断し、応答や動作がなかったり、けいれんしていたりする場合は反応なしと判断します。反応がある場合は、傷病者の訴えを確認し、必要な応急処置を行います。
もし反応がない場合は、ただちに119番通報とAEDの確保を周囲の人に指示しましょう。周りに人がいないときは、自分で119番通報をしてから心肺蘇生を始めます。
また、反応があったとしても、命の危険がおよぶ事態だと判断した場合は、迷わず119番通報し、適切な処置を行うことが重要です。
一次救命処置
傷病者の胸部が動いておらず、通常の呼吸ではなく、しゃくりあげるような何度も途切れる呼吸の場合、心停止の可能性があります。しかし、一般人が心停止を正確に判断するのは難しいため、まずはAEDを装着することが推奨されます。AEDは自動的に除細動が必要かどうかを判断してくれます。
心停止が確認された場合、AEDによる電気ショックが必要となります。AEDの蓋を開けて電源を入れ、電極パッドを傷病者に装着し、音声ガイドに従って操作を進めます。除細動ボタンを押す際には、周囲の人に離れるように指示を出すことが重要です。
もしAEDが手元にない場合は、AEDが届くのを待つ間に心臓マッサージを行う必要があります。胸部圧迫による心臓マッサージは、片方の手のひらを胸骨の下半分に当て、もう片方の手をその上に重ねて手を組み、真上から垂直に胸を圧迫します。このときの力の強さは胸が約5cm沈む程度です。
胸骨が折れる可能性もありますが、心停止から回復させることが最優先です。さらに、人工呼吸の訓練を受けており、充分な技術と意思がある人がいる場合は、人工呼吸を行うことが望ましいでしょう。心臓マッサージと人工呼吸を繰り返し行うことで、より効果的な応急処置が可能です。
まとめ
バイスタンダーは、けが人や急病人が発生した際に、その場に居合わせた人のことを指し、その役割は非常に重要です。心停止の早期認識と119番通報、一次救命処置を適切に行うことで、救命率の向上や患者の苦痛の軽減が期待できます。
バイスタンダーとしての知識と技術を身につけておくことは、自分自身や周囲の人々の命を守るために不可欠です。日常生活の中で、いつ自分がバイスタンダーになるかは予測できないため、常に準備をしておくことが大切です。