AEDといえば何色?色に込められた意味とは
AEDといえば何色を思い浮かべるでしょうか。実はAED本体はメーカーによって様々な色があります。そして、本体とは別に、AEDが設置されていることを示すマークがあり、日本では赤色を基調としたデザインが標準マークとして制定されています。その色に込められた意味を考えてみましょう。
日本のAED標準マークは赤
ハートに稲妻がデザインされ、AEDの文字が入った赤色のマーク。多くの場所で目にされたことがあるのではないでしょうか。これが日本で制定されているAED標準マークです。
実は、国際標準化機構(ISO)で制定されているAED標準マークは緑色を基調にしたもので、文字情報は含まれていません。それでは、なぜ日本のAED標準マークが赤色に制定されたのでしょうか。その経緯について見てみましょう。
■比較試験の結果に基づいた決定
日本のAED標準マークは、経済産業省が行った比較検査の結果をもとに制定されたものです。国内外1,000人を対象にISOで制定されているマークとの比較検査をしたところ、日本人の約94%が赤色の、文字情報が入ったマークを選択しました。
その結果を受け、日本工業規格(JIS)に基づく標準図記号として制定されたのが、現在よく目にしている赤色のAED標準マークです。多くの日本人が分かりやすいと感じたマークが採用されたというわけです。
■例外的だった独自デザインの採用
2020年に東京五輪・パラリンピックが開催されることが決まった後、経済産業省は様々な案内用標準マークの改正を行いました。訪日客増加を想定してのことです。非常口マーク、車椅子マーク、エレベーターマークなど、いずれも国際的基準としてISOが採用しているマークに近づけて改正されました。
しかし、AEDの標準マークのみ例外的に日本独自のものが採用されました。比較検査の結果を重視してのことだったのかもしれません。
赤は人に注意をうながす色
生活の中で目にする赤色のものを想像してみましょう。消防車、消化器、パトカーの警光灯などが浮かんでくると思います。セールや特売などのポスターを思い浮かべる方もいるでしょう。
または、学生時代の教科書やノートの重要な箇所に引いたラインを思い浮かべる方がいるかもしれません。いずれも注意をうながす目的で赤色が使われていることは確かです。実際に赤色の物を見るとハッとしたり、目が行ってしまったりします。
では、なぜ赤色は注意をうながす効果があるのでしょうか。もともと霊長類は青色と黄色しか認識できていませんでしたが、後に色覚が発達して赤色も感知できるようになりました。木の上で果物や木の実などの食物を探すために遂げた発達だとされています。食物を探すということは命に直結した行為です。そのため、赤色に敏感に反応するようになったのではないかという説もあります。
また、赤色は血液や筋肉を想像させることから、本能的に赤色に反応するのではないかとも言われています。赤色は、好き嫌いに関係なく、人類に注意をうながし、本能的に命を連想させる色なのかもしれません。
ライムグリーンのAEDもある
一般的にAEDというと赤色やオレンジ色の本体を想像する方が多いかと思います。しかし、意外かもしれませんが、ライムグリーンのAEDも存在します。注意をうながす赤色とは正反対とも言える、癒し系の色がAEDに採用されたのはなぜでしょう。
■ライムグリーンは自然界には存在しない色
緑色は目に優しいと言われており、それは光の波長に関係しています。ものを見るときには光が必要です。光には波長があり、その波長を見て特定の色を知覚しているという仕組みです。青色や紫色は波長が短く、赤色やオレンジ色は波長が長くなります。緑色の波長はその中間あたりに位置しています。そのため、波長が長いもの、短いものに比べて目に負担をかけずに感知することができるというわけです。
また、色彩心理学の視点からも、緑色は緊張をほぐしたり気持ちを癒したりと、心理面にプラス効果があるといわれており、米国では労働安全衛生法で安全を意味する色とされています。緑の木々が多い景色を見ていて目の疲れが癒された経験をお持ち方も多いかと思います。それは決して気のせいではなく、科学的根拠のあることだったのです。
このような特徴を持つ緑色の中でも特殊な色がライムグリーンです。緑色と黄色の中間に位置し、やや蛍光感を加えたような色です。自然界には存在しない色であるため、どんな背景からでも浮かび上がって見えるという特徴があります。原理は違っていても、目につきやすいという点では、赤色とライムグリーンの共通点ということになります。
■ライムグリーンは安全をイメージする救命の色
高速道路などで、作業員がライムグリーンの作業着を着て作業している光景を目にしたことがある方も多いでしょう。前述したように、ライムグリーンは目につきやすいという点から採用された色といえます。また、ライムグリーンは、夜間など暗い場面でも非常に目立つ色です。緊急事態は、昼夜を問わずに訪れます。
いつでも、どのような状況でも人間の心理面にプラス作用をもたらし、なおかつ目につきやすい、救命の色ともいえるライムグリーン。AEDの色として採用されていることにも納得できるのではないでしょうか。
AEDの色、標準マークの色とデザインについて考えてみました。目にすることは多くなっていても、その色に込められた意味までは考えていなかった方も多いはずです。しかし、よく目にするということは、目につきやすいことの証にもなっているとも考えられます。次にAEDを目にした際には、ぜひ色や表示されているマークにも注目し、その色が示す意味を考えてみてください。