命を守るための基本!一次救命処置の流れと手順を詳しく解説
緊急事態に直面したときに、あなたは適切な対応ができるでしょうか?救命処置の講習を受けた経験があったり、知識として知っていても、自信をもってできるとはいえない方もいるはずです。しかし、いざというときのあなたの行動が誰かの生死を左右するかも知れません。そこで、緊急事態に備えて一次救命処置の流れと手順を確認しておきましょう。
緊急時に必須の知識!一次救命処置とは
倒れた人を発見した際に必要とされるのが一次救命処置です。ここでは、一次救命処置の基本の知識について解説します。
一次救命処置とは、心臓や呼吸が停止した傷病者に対して、その場に居合わせた人が救急隊や医師に引き継ぐまでの間に行う応急処置のことです。専門的な器具や薬品を必要としない一次救命処置は、正しい知識と適切な処置の仕方を知っていれば誰でも行うことができます。
具体的には、心肺蘇生法とAEDを用いて自発的な血液循環を回復させる試みのことです。
なぜ一次救命処置が必要なのか
心臓が止まると脳へ酸素を運ぶことができなくなり、時間が経つにつれて助かる確率が低くなります。その理由は脳に酸素が届かない状態が3~4分続くと、脳の細胞が壊死してしまいます。脳の細胞は、ほかの細胞と違って再生能力がないので、一度死ぬと元には戻りません。
そのため救命処置が遅れると、命は助かっても脳に後遺症が残る可能性があります。早期に一次救命処置を開始することは、傷病者の救命率を上げられるだけでなく、その後の社会復帰においても大きな役割を果たします。
心肺蘇生法とは
心肺蘇生法とは、胸骨圧迫(心臓マッサージ)と人工呼吸を行い救命する方法です。
心臓や呼吸が停止した傷病者に対して、心肺機能を補助するために行います。心肺蘇生法で最も大切なのは「強く、速く、絶え間なく」胸骨圧迫を続けることです。心臓マッサージを行うだけでも、傷病者の救命率は大幅にアップします。
AEDとは
AED(自動体外式除細動器)とは、けいれんして血液を流すポンプ機能を失った状態になった心臓に対して、電気ショックを与え、正常な動きに戻すための医療機器です。空港や駅、学校、商業施設など人が集まるところを中心に設置されています。
AEDは、電源を入れると操作方法を音声で案内してくれるので誰にでも簡単に使えます。
命を救う第一歩!一次救命処置の正確な流れ
適切な救命処置を行うことで救命率は大きく変わるため、心臓マッサージの方法やAEDの使い方を知っておくことは大切です。ここでは、一次救命処置の正確な流れを解説します。
周囲の安全を確認
誰かが倒れるところを目撃したり、倒れている人を発見したときは、まず周囲の状況が安全かどうかを確認してください。道路上など危険な場所に傷病者がいる場合は、周囲に注意しながら安全な場所まで動かします。
ただし、車の往来が激しい場所や煙が立ち込めるような場所では、救命以上に救助者の安全確保が最優先です。無理をせず警察や消防の到着を待ちましょう。
意識の確認
周囲の安全を確認したら、傷病者の耳元で「大丈夫ですか」と声をかけ、肩を軽くたたき反応があるか確かめます。目を開ける、うなずく、声を出すなどの反応(意識)がない場合、あるいはその判断に迷う場合は、協力者を求め、緊急通報(119番)とAEDの手配を依頼してください。
反応(意識)がある場合は本人にとって楽な体位を取らせます。本人に聞いても楽な体位がはっきりしないときは、気道を確保しつつ横向きに寝かせる回復退位にしておくとよいでしょう。
呼吸の確認
次に、傷病者が心停止を起こしているかを判断するために呼吸を確認します。胸部と腹部の動きを10秒以内で確認し、普段どおりの呼吸がない場合、またはその判断に迷う場合は心臓マッサージを開始します。なお、しゃくりあげるような、途切れ途切れの呼吸(死戦期呼吸)は普段どおりの呼吸ではありません。
胸骨圧迫(心臓マッサージ)を開始
心停止を確認したら、直ちに胸骨圧迫(心臓マッサージ)を開始してください。傷病者を固い床面に上向きに寝かせて、救助者は傷病者の片側、胸のあたりで両膝をつきます。自分の両手を上下に重ねて組み、下側の手首の盛り上がった部分(手掌基部)を傷病者の胸の真ん中にある胸骨の位置に合わせます。
その後、胸骨が床と垂直に5cmほど沈み込むように、1分間に100~120回の速さで30回圧迫してください。傷病者が小児の場合は、胸の厚さの約1/3沈み込む程度の圧迫で行います。周りに交代できる人がいれば、1~2分間を目安に交代しながら心臓マッサージを行いましょう。
人工呼吸を行う
人工呼吸の技術を身に付けており、人工呼吸を行う意思がある場合は、心臓マッサージを30回した後に人工呼吸を2回行います。気道を確保しながら、片手で傷病者の鼻をつまみ、自分の口を大きく開けて傷病者の口を覆ってください。1回に1秒かけて、傷病者の胸が上がるのがわかるまで息を吹き込みます。
AEDを使う
AEDは、音声ガイダンスでするべきことを指示してくれるので指示に従い操作しましょう。電気ショックを行ったら、すぐに心臓マッサージを再開します。
救命処置を続ける
救命率を上げるためには、心臓マッサージとAEDをあきらめずに続けることが大切です。救急隊に引き継ぐまで、または傷病者に普段どおりの呼吸や目的のあるしぐさが認められるまで救命処置を続けましょう。
一次救命処置に欠かせないAEDの使用ポイント
AEDの使い方は機種によって違いがありますが、基本的な操作はシンプルなので誰でも使用することが可能です。ここでは、AEDの使用ポイントについて解説します。
AEDの電源を入れる
最初にAEDのフタを開けて電源を入れましょう。機種によっては、フタを開けると電源が入るものもあります。電源を入れると音声ガイダンスが始まるので、指示に従って落ち着いて操作してください。
電極パッドを張り付ける
次に傷病者の胸をはだけて、2枚の電極パッドを皮膚に密着するように貼り付けます。だだし、胸部が濡れている場合は拭きとり、湿布薬などの貼り薬がある場合ははがしてください。ペースメーカーなど皮膚の下に埋め込まれている場合は、そこを避けて貼り付けます。
また、傷病者が小児の場合は、こども用パッドか小児モードに切り替えましょう。ない場合は大人と同じパッドを使います。なお、パッドを貼る際も心臓マッサージは続けてください。傷病者の胸部に電極パッドを張り付けると、AEDが自動的に心電図を解析し、電気ショックが必要かどうかを判断します。
電気ショックを実行する
AEDが心電図を解析し始めたら、心臓マッサージをやめて傷病者から離れましょう。電気ショックが必要な場合は「電気ショックが必要です」と音声ガイダンスが流れるので、誰も傷病者に触れていないことを確認して、電気ショックのボタンを押します。
電気ショック後はすぐに心臓マッサージを再開します。AEDは2分おきに自動的に心電図の分析を始めるので、音声ガイダンスにしたがって操作してください。電気ショック不要の表示が出た場合も心臓マッサージを再開します。
傷病者に普段どおりの呼吸が戻っても、動き出してもパッドは外さず、AEDの電源も入れたままにしておきましょう。
まとめ
傷病者を救命するためには、早期に一次救命処置を行うことが大切です。一次救命処置が正しく行われた場合は、行われなかった場合に比べて確実に救命率が上がります。一次救命処置を必要とする場面に遭遇することはそれほど多くないかも知れませんが、万が一に備えて対応できる知識を学んでおくことは重要です。各地方でも一次救命処置の講習会が開催されていますので、興味のある方は参加してみましょう。