熱中症で倒れた人にもAEDは使用すべきか?
熱中症は軽視できない危険な症状です。もちろん、適度に休憩をとったり水分補給を定期的に行うこと、睡眠不足のまま屋外で活動しないなど、日頃から予防対策を徹底することが大切ですが、初期症状を見逃さず、迅速な対応が命を守るカギとなります。今回は、熱中症の症状と危険性、応急処置の際のAEDの必要性などについて解説します。
熱中症の症状と危険性
暑熱な環境で活動する際、熱中症のリスクは常につきまとうものです。熱中症とは、高温や高湿度によって体温調節機能が破綻し、さまざまな健康上の問題や症状があらわれます。こちらでは、そんな熱中症の症状とその危険性について詳しく説明しましょう。
熱中症の症状
熱中症の症状は、軽度、中等度、重度の3つの段階に分類されます。まず、軽度の熱中症では、体温調節機能の不全により、立ちくらみやめまいが起こるのです。また、筋肉痛や発汗量の増加も見られます。
中等度の熱中症では、頭痛、気分の不快感、吐き気、嘔吐、倦怠感、虚脱感などが現れます。この段階では、医療機関への搬送の準備をする必要があるでしょうす。
重度の熱中症では、意識障害、痙攣、手足の運動障害などが現れ、とても危険な状態となります。速やかな医療処置が必要です。
熱中症の危険性
軽度の熱中症であれば、涼しい場所でしばらく休息したり、適切な水分補給で充分回復します。しかし、重症化すると大変危険です。
初期症状を見逃すと40℃以上の高体温になり、多臓器不全を引き起こし、最悪の場合は死にいたることもあります。たとえ一命を取り留めても、脳機能に後遺症が残る危険性があるため、熱中症の予防と早期の対応が非常に重要です。
予防と対策
熱中症を予防するためには、適切な休息と充分な水分・塩分補給が重要です。とくに屋外作業では、電動ファンや保冷パッドを活用することで、効率的に熱を下げることが可能です。
さらに、熱中症対策に特化した機能性アイテムを積極的に取り入れることで、炎天下での作業者の安全と健康を守れるでしょう。
熱中症にかかりやすい人々
熱中症でとくに注意が必要なのは、乳幼児、高齢者、屋外で作業を行う方です。
乳幼児は体温調節機能が未熟で、体温が急激に上昇しやすい特徴があります。また、夏場にベビーカーに乗せて移動すると、日光で熱された地面との距離が必然的に近くなり、熱中症にかかりやすい環境になってしまうのも注意すべき点です。
高齢者も加齢により体温調節が難しくなっています。老化により体温調節機能がおとろえ、暑さへの感覚が鈍くなっているのです。そのため、熱中症になっていることに気づかず、亡くなる方は少なくありません。
屋外作業者でとくにヘルメットや長袖の作業服を着用して長時間作業する人の場合は、適切に放熱ができず、熱中症にかかりやすくなります。作業中はファン付きの作業着を着用する、首元を冷やす、適度に休憩をとるといった対策を行いましょう。
熱中症の応急処置にAEDは必要?
夏の暑い日や運動中に、体温が上がりすぎてしまうと熱中症になることがあります。熱中症の応急処置として、水分補給や涼しい場所での休息が必要です。しかし、AEDは心臓が止まったときに使うもので、熱中症の応急処置としては必要ありません。
熱中症と心臓の関係
熱中症と心臓の問題は異なるものですが、重度の熱中症が進行すると、心臓に負担がかかることもあります。たとえば、熱中症が進行して熱射病になると、心臓やほかの臓器にも影響をおよぼすことがあるのです。
しかし、これらの場合でも、まずは体温を下げることが最優先されます。心臓が止まった場合にはAEDが必要ですが、それは熱中症とは直接の関係がありません。
AEDが必要になる場合
AEDが必要になるのは、心臓が止まった場合や不整脈などの心臓の問題が発生した場合です。たとえば、突然倒れて意識がなくなり、呼吸もしていない場合にはAEDの使用が考えられます。
しかし、熱中症はこれとは異なり、体温の上昇が主な問題ですので、AEDを使用する必要はありません。
熱中症の応急処置の方法
めまいや筋肉痛など熱中症を疑う初期症状が出たら、涼しい場所に移動し、意識があるか確認をしましょう。呼びかけへの反応が悪いときは無理に水分補給をさせてはいけません。
もし呼びかけに応じなければ救急車を呼んでください。ここでは、意識がある場合とない場合のそれぞれの対処法をご紹介します。
意識がある場合
服をゆるめて体を冷やしながら、水分・塩分補給(経口補水液・食塩水など)をさせます。しばらく様子をみて、症状が改善したらそのまま安静にしましょう。
もし改善しない場合は、医療機関に搬送し、治療を受けるべきです。
意識がない場合
呼びかけに応答しないときは、救急車を待つ間も迅速な応急処置が必要です。呼吸・脈があるか確認し、ある場合は涼しい場所に移動させ、ない場合はすぐに心配蘇生とAEDによる措置を行います。
また、可能であれば、呼吸と脈の確認が取れた患者の直腸温(深部体温)の測定を行うと、熱中症のその後のケアがしやすくなります。必要な応急処置を施し、衣服をゆるめて体を冷やしながら、救急車の到着を待ちましょう。
まとめ
熱中症は毎年数万人以上の人が病院に搬送される事故が起こっており、侮れない病気のひとつです。最悪の場合死にいたる可能性もあり、早めの処置・対応が欠かせません。心肺停止の事態に発展すれば、心臓マッサージやAEDによる対応をしなければならないケースもあります。
熱中症の疑いがある人がいたら涼しい場所で体を休めさせ、必要な処置を行いましょう。体を冷やすときは、首回りや脇の下、脚の付け根など太い血管がとおる場所を重点的に冷やすと効率的です。