AED講習会で取れる資格について。インストラクター講習もある
AEDを扱うための講習があることをご存知でしょうか。講習を受けることで初歩的な救命に関する知識を身につけられ、資格として使用することも可能です。医療現場に従事していなくても、緊急の際に的確な対応ができるよう、備えておくことは重要だといえるでしょう。この記事では、どのような資格が取得できるのか、種類や内容について紹介します。
講習会で取れる資格
消防署が主催している救命講習は無料(自治体によっては有料)で手軽に受講でき、3年間有効な認定証を取得できます。ある程度の人数が集まった場合は出張してくれることもあるため、地域の消防署に確認してみましょう。
救命技能認定証
3時間の普通救命講義を受けます。心肺蘇生や自動体外式除細動器(AED)の使い方、止血方法、窒息の手当などについて学ぶようです。人形を使用して心肺蘇生のプロセスを学び、人工呼吸のコツ、心臓マッサージのための胸骨圧迫の方法などを教えてもらいます。AEDに関しても講義を聞いた後に実習を行い、心肺蘇生を行いながらAEDを使う練習を重ねるようです。
上級救命技能検定証
傷病者管理や小児・乳児の心肺蘇生、外傷の応急手当、搬送法などを8時間にわたって学びます。三角巾を使って腕や足などを固定する応急処置や、急病者を毛布で包み簡易担架で搬送するプロセスなどを実習形式で学ぶようです。乳児の人形を使って、のどに詰まったものを取り除く応急処置なども行います。最後に筆記テストで簡単な知識の確認があるようです。普通救命講習を受けていなくても受講できます。
AED講習会の種類
厚生労働省の指針に基づき、講習会は受講者の種別によって所要時間が異なります。内容は難しいものではありませんが、命にかかわる作業のため、集中力を保って受講しましょう。
非医療従事者(一般市民)
所要時間180分の受講が奨励されています。心停止の予防を含む救命の連鎖の重要性や、通報することで口頭指導が得られることを学びましょう。成人の心肺蘇生をひとりでする場合の、AEDの取り扱い方や止血法、異物除去法などを実務中心で学びます。
一定の頻度での対応が想定される者
ホテルやゴルフ場、フィットネスクラブなどに従事し、心停止者に対する救急対応が想定される人は、220分の講義を受講することが条件づけられています。一般市民向けの講義に加えて、業務の中でAEDの位置づけについて理解していなければなりません。また、さまざまなシナリオに対応して、適切な心肺蘇生やAEDが実施できることを確認します。
講習を行っている団体は公共では消防署や日本赤十字などがあり、そのほかではNPO法人や日本ACLS協会、AEDの専門店や販売会社などが挙げられるでしょう。
AEDインストラクター講習
AEDの使用に関する講師になるには360分の講習を受ける必要があります。一般市民の倍の時間をかけて、座学形式の講義とAEDを使用した実技指導を受けるのです。講習は3つのパートにわかれています。
講義
オリエンテーションと基本的な心肺蘇生法処置の確認、AEDの知識と基本的原理から成り、2時間の座学でAEDの概念や使用方法、注意事項などを学ぶようです。
実技
効果的なAEDの使用方法で基本の心肺蘇生法を復習し、AEDの使用方法とポケットマスクを使用した人工呼吸法、AED使用法についての指導法を学び、所要時間は3時間程度とされています。
試験
知識の確認を筆記試験で行い、実技試験では実技を評価されます。評価判定に合格した場合には終了証が授与されるようです。
なぜ6時間に及ぶ長い講習が始まったかというと、日本で心肺蘇生法の普及活動を最初に行った河村剛史医学博士の思いが込められているからです。数十年前には日本ではまだAEDの一般使用が認められておらず、心肺蘇生法も普及していませんでした。当時、心肺蘇生を施されなかった結果として帰らぬ人となった場面を目の当たりにした河村氏が、救命救急に対する人々の意識向上を図るために奔走したのです。河村氏の志を受け継いだ人により、現在も普及活動が行われています。
AEDインストラクター講習を受けるには、心肺蘇生法が問題なく実施できることが条件となるようです。当日は動きやすい服装でのぞみ、筆記用具やタオル、ポケットマスクなど忘れ物がないよう確認しましょう。受講料は運営団体により異なりますが、時間とお金をかけることでAEDの指導を行う立場を目指す意義を考えて、しっかりと受講してください。
AEDインストラクター講習の流れ
AEDインストラクター講習は下記のカリキュラムに沿って行われることが多いようです。
・講義:9:30~11:30
1 オリエンテーション
2 基本的心肺蘇生法処置の確認
3 AEDの知識、基本的原理
・昼休憩:11:30~12:30
・実技:12:30~15:30
1 意識の確認・心肺蘇生法の実技指導
2 AEDの使用に関する実技指導
・試験:15:30~17:00
1 筆記試験(更新が目的の受講者は免除)
2 実技試験
3 評価判定解説
・修了証授与:試験合格者のみ授与
以下の点に関しては事前に準備や確認をしておきましょう。
受講資格:心肺蘇生法(CPR)を問題なく実施できること
服装:動きやすい服装とすること
持参物:筆記用具、タオル、ポケットマスクなど
受講後の対応:講習修了に認定登録申請した場合は、AED インストラクターの認定証が交付される(申請費用は有料)
その日一日かけて学んだことがきちんと身についているか、実践することができるかどうかを把握する試験なので受講すれば取得できるというものではありません。受講料も一般市民か実施団体の会員かどうかでも異なりますが、時間とお金をかけることや人の命を救うAEDの指導をする立場を目指す以上しっかり受講してAEDインストラクターの認定をもらいましょう。
AED講習を受講する意義
AEDは心停止した方の生存率を高められる、非常に重要な装置です。自動で心電図の解析を行い、電気ショックで正常な心臓のリズムに戻す装置で、音声案内があるので、誰でも使えるのがメリットです。
いくら音声案内があるとはいえ、いざ人が目の前で倒れた時に適切な判断をスムーズに行える方はどの程度いるでしょうか?多くの方は、初めての状況に動きが鈍るでしょう。
この記事では、AED講習を受講する意義を解説します。記事の後半では講習の種類も解説するので、ぜひ参考にしてください。
AED講習を受講する意義
AED講習では、AEDの使い方だけでなく、人が倒れた時の対処法・流れを教えてもらえます。模型を使った実習もあるため、より実際のケースを想定した技能の習得が可能です。
そもそも日本では、急性心筋梗塞で亡くなる方が多くいらっしゃいます。平成27年時は、1年間で3万7,222人が亡くなったというデータがあります。これは1日当たり101人が心筋梗塞で亡くなっている計算です。統計上では、いつ目の前で人が倒れるかわからないのです。
救急車の到着時間は、全国平均で8.9分となっており、10分弱で現場に駆けつけてくれます。しかし、人が心肺停止状態になってから3分ほどで生存率は20%まで低下し、10分が経過すると生存率は10%を切ります。
AEDや胸骨圧迫といった適切な処置を施した場合は、3分経過時の生存率を50%、10分経過時の生存率を約20%まで引き上げられるため、AEDを素早く用意して、処置を行うことは非常に重要です。
1人でも多くの方の命を救うためにも、消防署などで無料受講できる救命講習の受講を検討してみましょう。
AEDの使い方を学べる講習
AEDの使い方を学べる講習としては、消防庁が開催する普通救命講習があります。いくつか種類があるので、それぞれの特徴をまとめました。
救命入門コース(45分/90分)
小学校高学年、普通救命講習を受けたいが講習時間が取れない方、これから普通救命講習を受講される方等が対象。胸骨圧迫やAEDを中心に学ぶコース
普通救命講習(3時間)
心肺蘇生やAED、止血法、異物除去などを学ぶコース
普通救命(自動体外式除細動器業務従事者)講習(4時間)
普通救命講習の内容に、AEDの知識確認と実技の評価が加わったコース
上級救命講習(8時間)
普通救命(自動体外式除細動器業務従事者)講習の内容に加えて、小児・乳児の心肺蘇生、傷病者管理、外傷の応急手当、搬送法を学ぶコース
出典:東京都消防庁
迷ったら普通救命講習がおすすめ
普通救命(自動体外式除細動器業務従事者)講習と上級救命講習は、より専門的な知識・技能を培うコースで、相応の受講時間が求められます。
AEDの使い方や心肺蘇生の方法、家庭で役立つ機会の多い異物除去に関する知識・技能は普通救命講習で習得できるため、各自治体に問い合わせて受講してみましょう。
参考サイト:https://www.criteria-select.net/trainingcourse/license.html
AED自体はとくに講習を受けなくても、音声ガイダンスに従って操作を行えば誰でも使用可能です。ただし、予備知識なしに実際に心停止になった人を目の前にして、冷静に適切な処置をすることは難しいものでしょう。日本では救急車を呼んで到着するまでの時間は約7分かかるといわれており、待っている間に措置するかどうかでそのあとの状態が大きく異なります。自分の家族だけでなく、誰かにとっての大切な家族の一員を助けるためにも、受講してみることをおすすめします。